7月25日に開催されたサーキュラーエコノミー&広域マルチバリュー循環研究会「CENo8ミニテクニカルプラットフォーム」において、当社社員が「静脈業界での火災事故頻発の背景と業界の取組」というテーマで発表させて頂きました。
(発表の詳細(抜粋版)はこちら)
近年、リチウムイオン電池を原因とする火災が静脈業界で頻発しており、業界全体の課題となっています。統計上、廃棄物処理の現場では毎日、日本のどこかで1時間当たり1件以上のLiBによる火災が起きており*、その損失はここ数年で100億円以上にのぼるとも言われています**。処理施設で火災が起きてしまうと、廃棄物処理のインフラとしての機能が損なわれ、実際に自治体によるゴミの回収・処分に支障が生じる事例も複数発生しています。そして、何よりも、静脈産業に従事する人々の安全も脅かされている状況です。
このような状況を受け、静脈業界では、一般廃棄物の分野でも産業廃棄物の分野でも、それぞれ多くの対策が行われています。排出事業者への啓発活動から消火設備等の設備投資、事前の選別、防火訓練、施設の運用上の工夫に至るまで、様々な事故防止の取組を行い、火災を減らす努力をしています。
しかし、リチウムイオン電池を内蔵した製品は今後も増えていくと予想されており、処理業界内の自助努力だけでは、事故を完璧に防止することは難しい状況です。
今回の会合では、社会的全体での取り組みの必要性を訴え、下記のような案を提案させて頂きました。
1.啓発CM(テレビ、ネット、YOUTUBE、各種SNS)
2.一般廃棄物分野におけるリチウムイオン電池の回収スキームの変更
(市民がより取り組みやすい方法への変更、大阪市、町田市等の事例をもとに)
3.より安全性の高い蓄電池の開発・代替
4.リチウムイオン電池の自動選別機の導入推進(補助金・DX推進のサポート)
サーキュラーエコノミーの実現のために静脈企業が果たす役割は大きく、メーカーに再生資源を供給するパートナーとしても今非常に注目されています。しかし、現在は不燃ごみや可燃ごみにリチウムイオン電池が紛れ込んでしまう事例が後を絶たず、業界全体の安全が脅かされています。このような状況で、果たしてサーキュラーエコノミーの実現が可能でしょうか。サーキュラーエコノミーへの移行は、本来は、下記のステークホルダー全体での協調・協力が欠かせないと、当社は考えています。
・メーカー(電池メーカー、製品メーカー)
・商社、販売事業者
・排出事業者、消費者
・静脈業界(一般廃、産廃、スクラップ)
・国、行政
このリチウムイオン電池の問題についても、社会全体での取組みが行われていくことが必要だと考えます。「安心・安全の廃棄物処理・リサイクル」の実現のため、当社は引き続き、この問題の啓発・改善に取り組んでいきたいと思います。
出典
*:環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策集(令和5 年度版)」
https://www.env.go.jp/content/000214935.pdf
**独立行政法人製品評価技術基盤機構「「ごみ捨て火災」、被害は100億円超え!」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2023fy/prs230629.html