いつもコラム記事を読んでくださっているみなさま、こんにちは!エコスタッフ・ジャパン株式会社(ESJ)の石中です。
普段はこのコラムでは、主に「産業廃棄物に関する基礎知識」や「環境に関する時事ニュース」について取り上げて解説しております。
今回は当社の代表、田部和生にインタビューを行いまして、ESJのこれまでの成り立ち、設立後約20年の静脈業界の変化やESJの歩み、また田部自身の経歴について深く掘り下げていきます。
第3弾は「エコスタッフ・ジャパンについて」と題し、これまでの事業内容や今後の展望ついて質問しました。
質問)国の優良基準に ESJ独自の基準を加え認定した「優良な廃棄物処理・リサイクル事業者」を認定企業と呼んでいますが、目指す最終目標を教えて頂けますでしょうか。また、ESJのビジョンである「いつでもどこでも安心・安全な廃棄物処理・リサイクル」が目指すところは何でしょうか。
田部)ネットワーク(処理側)の最終目標はESJ認定企業のみで全県・全品目が対応できる状態だと考えています。そのためには、認定企業が2~300社になる、という感覚ですが今現在お取引のある企業数がちょうどそれくらいです。長い道のりになりますが、(ESJとして)ご一緒できたら嬉しいと思っています。
排出側での目標は、具体的に言うと、排出企業ご担当者から「この案件はESJ認定企業さんのみでお願いします」と言われることです。いわゆるご指名買いです。現場のご担当者からも「この仕事はESJ認定ドライバーだけでお願いします」と言われることを目指したいと思います。つまり、教育と営業の連携・シナジーが実現している状態です。そのためにやるべきことは多くあります。
きちんと教育研修が現場まで行き届いていることや、ESJの存在自体がもっと知られないといけません。ESJのロゴを見かける、担当者の口コミから広がるなどして、全国の現場で「ESJの指名買い」が普及してくる状態になれば理想的です。ESJのネットワークは異なる会社で構成されていますが、全国標準化による品質向上や差別化のメリットが双方に伝わり、実際に利用もされている。とても難しいことですが、個社では難しいことを連携で実現する。これが大きなテーマです。
教育面での目標を一歩掘り下げて具体的な例で言うと、「ESJゴールドクラスドライバー」による指導と選抜が各認定企業内で行われ、そのトップドライバー達がスキルを競う「ESJ全国ドライバーコンテスト」の開催などでしょうか。毎年、全国No.1ドライバーが決まり、地区大会予選もあり、各大会では出場者同志で切磋琢磨し、前向きなエネルギーが手に取るように見える場所となっている。ドライバーさんにとっても前向きで刺激のある出会いが多くあるでしょう。こういった場所や機会、企画を提供し続けていきたいと思います。
質問)ESJネットワークの理念について、共感頂ける会社とそうでない会社の違いはどういったところにあると考えますか?
田部)はい。端的にお答えすると「経営理念」だと思います。今の当社があるのは、当社のビジョンに対し賛同して頂き、ESJネットワークを一緒に立ち上げた認定企業の皆様からの応援のおかげです。創業当初、「今すぐ目に見えるメリットがない限りは入る理由がない」と言われたことが何度かありました。これは、ある意味で当然の意見とも思えます。しかし、逆にその「メリット自体を共に創っていきましょう」と言われたことも何度かありました。物事を始める時に、一緒にやる側になるのか、待つ側になるのか、これは経営者によって全く違います。
その会社の経営理念が、「自社単独」もしくは、「連携展開」のどちらに重きを置き成長・拡大していきたいと考えているか。これらは単純に理念の違いであって、どちらが良い悪いということではありません。経営者の知識・理解の範囲や現状の規模で良いとするか、それとも、広く他社の取組を見てもっと成長したいと考えるか、という違いだと思います。
当社の研修コンテンツは、処理の現場の担当者様やドライバー様の成長を促すようなプログラムから、関係省庁の担当者との継続的なコミュニケーションにより得られる最新の動向を織り込んだものまで、網羅的な内容となっています。こういった教育・研修を、外部に頼らずに自社単独で継続していくことは非常に難しいと思います。単独1社では難しいことを複数で実現する、その価値を出していくのが当社です。
質問)では、その理念に共感頂いた認定企業に共通していることは何でしょうか。
田部)そうですね。各県の「勝ち組企業」である、と思っています。実際にTDB(帝国データバンク)を見てみると、各県トップクラスの企業が殆どです。また、とても前向きな会社、経営者の方が多い印象です。逆説的に言うと「ESJが無くても全く支障ない」レベルの企業ばかりです(笑)。となると、そういった企業に対し価値を出していかねばならないということです。これは簡単なことではありません。なので、いくら優れていても1社単独では出来ないことは何か?という視点が大事です。どう価値を出すかを考え、具現化し続ける必要があります。
また、伝え続けていく必要もあると最近強く感じています。頑張って新サービスをリリースしても、相手の会社のキーマンに伝わってないと感じることがコロナ禍から何度かありました。それまで認定企業の担当者(ESJマネージャー)も変更が少なかったこともありますが、20年近くやっていると当然担当者の変更もあります。また、何より定期的に研修会で顔を合わせていましたので伝わりやすかったわけです。
そこで感じたことは結局、優良な企業とは言っても結局は「人」なんだな、ということです。優良と言われる企業には必ず「番頭さん」のような人がいらっしゃいます。その方を窓口として継続的に接点を持ってきたから成立してきたということです。時間の経過、担当者変更で会えなくなる、そうなると「伝わりにくくなる」のは当然です。なので、意識的に訪問し、お話をし、また様々な方法や媒体を使って「ESJの価値を訴えていく」ということをやり続けたいと思っています。コロナ禍にはWebで情報交換会というものを行いましたが、やはり会って話をするのとでは全く違いますね。最近は特に人に会いに行っていますのでとても良くわかります(笑)。
質問)実際にESJが提供しているサービスにおいて、評価の声があるのはどのようなものでしょうか。
田部)やはり、現場向けの教育研修ですね。愚直にこれをやり続けたいと思います。結局のところ教育研修の継続・積み重ねが、長い目で見ると最大の差別化になります。当社にとっても、認定企業さんにとっても、です。廃棄物の研修は職種別にずっと続けていますが、中でもドライバーさん向けに全国各地、各社の駐車場にまで伺い、10年以上続けている会社は他にはないと自負しています。全国標準の検定もその一つです。
当社の場合、会社の認定(ネットワーク)はトップの意思で始まりますが、研修については担当者レベルでその必要性や価値を感じているか、という点がとても重要です。トップの「やってみろ」に加え、出張できる予算や、その価値観・考え方が現場と共有されていることも、大事な要素です。最初は難しくとも、どこかのタイミングで変わって継続的に研修に参加される会社もあります。それは変わっていることの証でもあると感じます。
特に検定に関しては伝え続けてきたので、声がかかるようになったとも思います。そのきっかけにもなった「ESJアワード」と言う表彰があるのですが、これも当社の社員による発案で始まりました。環境省さんや経済産業省さん、全国認定企業の前で表彰されるそのPR効果はとても大きく、大変喜んで頂いています。
営業案件に関しても、最初は代表者同士からが多いのですが、その後は担当者同士で始まり、続いています。ESJがきっかけとなった案件も多くあり、これも当然ご評価頂いていますが、きっかけは忘れられやすいものです(笑)。それも自然と言えば自然。営業案件は、ESJ主導での案件化を目指し続け、また担当者が変わった後も続く形を提供し続けることが大事だと思っています。
全ては顔を合わせて、お互いの信頼感を得る場所から始まっています。顔も合わせたことのない方に大事なことは言えませんし、本音も言いにくいですよね。また、一度会っただけで全てがうまくいく、ということもありません。なので、重複しますが、やり続けることが大事です。我々はご担当者の方々から「あの場所(ESJ)には絶対行った方がいいよ、なぜなら・・」と言われるような場所を提供し続けることですね。これからも一層励みたいと思います。
(左:インタビュアー 石中、右:当社代表 田部和生)
質問)改めて、今後のESJのビジョンについて聞かせてください。
田部)はい。静脈業界における安心安全のブランド、が我々のビジョンですが、それに向けて中長期、短期で様々な取り組みを行っていきます。長期では、当業界の「ヒト・モノ・情報・カネ」各領域における事業を分社化できるほどに昇華させたいと考えています。イメージを挙げると、下記のようなものです。
*「採用から教育、就職まで一貫して対応」
*「リサイクル製品の認証機能」
*「最新処理技術の研究」
*「最先端事業のファンド」
これらは基礎にあるネットワークを活かしたもので、そのネットワークは「認定され、教育され、安心の」ものである必要があります。
これらを具現化するには会社全体として、強い意思と諦めない情熱が必要です。「会社や上司が言うから、言われたから」ではなく、イメージを「必ず実現できる」「やってみたい」と思える人材と時間を共にしたいと思っています。「できない」「無理」はいつでも言えますし、諦めるのも簡単です。だからこそ、「実現するにはどうしたらよいか」を考え、実行する、そういう仲間とともに進めていきたい。もちろん、一人でやる必要は無いし、そもそも一人では出来ない事業です。SDGsそのものではないですが、やはりパートナーシップ、連携で会社を大きくしていきたいですね。
これまで数えきれないくらい失敗をしてきました(笑)。特に新規事業が多いのですが、それでもチャレンジし続けたいですし、社員にもチャレンジしてほしいと思っています。実際この数年で会社も社員も大きく変わってきています。今年の初めには「くるみん認証」を取得することができました。社員にも家族が増え、産休育休などをしっかり取れたことがきっかけになっています。取得手続きは大変でしたが、これも社員自身が発案し、諦めずにやり遂げたからできたことです。
そもそも、「取れるリスクは取る」というやり方で行かないと、新しいことは始まりません。当社の宿命ともいえますが、当然人間なので疲れる時もあります。そういう時は息抜きをうまく、自己管理ができることが大切ですね。自家発電と運転管理、という感じでしょうか。特に新しい社員には新規事業が初めてということも多くありますし、そもそも人間100%で走り続けることはできないので、速度を落とす時があってもいいのかなとも思います。ただ当社なのであれば、「やる・創る」側の発想・人になって仕事を楽しんで欲しいと感じます。社員に加えて認定企業の皆様など、仲間は多くいます。
質問)ESJの強味とはなんでしょう?また、どういうメンバーがいると感じていますか。
田部)オフィシャルウェブサイト刷新の時に社員で一緒に考えた、「廃棄物に関する日本唯一の総合窓口」、これに尽きると思います。わかりにくい業界への、安心の窓口(入口)です。ここに来ると安心して何でも相談できる。信頼できる担当者がきちんといる、そんな会社でありたいと思っています。この業界にはいろんな会社があり、信頼できる人も多くいますが、担当だった人が急に辞めたら?会社の方針やオーナーが急に変わったら?という不安は付きまとうものです。つまり、「個人」という属人的なものではなく、「組織」として存在し続けている、ということが重要だと考えています。当社自身、最初は信頼できる「人」から始まっているのですが、目指すのは安心できる・信頼できる「組織」です。
ちょっと例を挙げてみます。株式会社リクルートはみなさんご存じですよね?この会社は「人」を起点に、就職、結婚、住宅など人生のステージごとに様々なソリューションがあります。サービスの形や媒体も様々あり、また会社、社員にもベンチャースピリットがある会社で有名です。あくまでイメージですが、ESJは廃棄物のリクルートのような存在になりたいと思っています。あらゆるパターンの相談・ニーズに対し、答えや選択肢が用意できる。社員がそのまま社長になる。まだまだ遠くて少し恥ずかしい面もあるのですが、あえて言っておきます(笑)。
でもこういったことを言える、その理由を考えてみると、やはり起源は当社が掲げる壮大なビジョンだと思います。業界内での複数出資という設立経緯もその一つです。顧問の細田先生や、株主の社長陣、認定企業の社長、マネージャー、現場担当者の方々とのご縁。こういったキラ星のように輝く人財に集まってもらうことは簡単ではありませんし、とても貴重だと思っています。
質問に戻りますが、当社の従業員の個性は様々です。私は人材とは石垣だと捉えています。多種多様な形の石が積み重なって強固な石垣となるように、多様な個性がある方が組織も強い。実はこれ、最初に入った会社の人事課長が言っていた言葉です(笑)。時間をかけてその意味がよくわかります。ビジョンやベクトルを同じくして、それぞれのやり方や個性を生かした形でやりたい事に対し、やりがいを持って実現していってもらう。それが一番良いと思います。
質問)創立20年を前に、最後に展望を聞かせてください。
田部)まずはここまで会社が存続出来ていることに対して、お客様・認定企業の皆様・株主・社員などあらゆる方々に対して感謝したい、の一言に尽きます。これまで楽しいことも多くありましたが、苦しいことや失敗した時のことの方が記憶には残りやすいものです。ただそこで学ぶことの方がはるかに多かったりもします。それらを超えて今がありますし、超えられたということ、そこに価値があるとも感じています。
私自身、考え方や進め方も変わってきています。この会社に出会って初めの頃は自分で何でもできると考えていて、「社長ならそうあるべき」とすら思っていましたが、今は全く違います。一人では全くもって無理、あらゆる方の力が必要であると感じています。人を育て、仲間を増やし、組織や文化、仕組みを創る仕事。常に謙虚でありたいし、お互いにリスペクトを持って仕事をしたい。このことに気づくのにずいぶん時間がかかり、失敗もしました。また、自分がずっと探していた「師」と言えるような方が多くいるのもここだ、ということにもようやく気付きました。各地を代表する企業の経営者にお会いでき、業界の未来について真摯に語りあえる、こんな仕事は本当に貴重です。先日49歳になり、自分自身は20代後半から変わっていないと思っているのですが(笑)、実際は大きく変わってきているのだなと感じます。当社がそもそも難しいことをやっている以上、壁があるのは当然です。ただ時間がかかりながらも、会社としてもネットワークとしても着実に良い方向に変わってきていると感じています。それはお客様や社員をはじめ、多くの関係者の方々の力によるものです。細田先生も毎年の講演会で「常に自身が変わっていくべき」と仰っていますが、常に変わっていく必要があるのは当社自身です。
この数年は日本を代表する企業や、海外でも大手と言われる大企業ともお取引をすることができました。その内容も最先端と言っていいと思います。でも我々のベースはあくまで処理企業のネットワークや現場の教育研修など、地道な所にあります。変わらずこれらをやり続けながら、一方でステージを上げていく必要性も感じています。
振り返ると、「そんなの到底無理だよね」という方は常にいらっしゃいましたが、今我々が事業として日々行っていることはその「無理」といわれたことです。難しいことをやる以上、そのように言われることは当然のことです。「当たり前の価値観」が違うということなのだと思います。これからもそういう方はいると思いますが、実際この会社は潰れることなく存在し、営業黒字化も果たしています。会社経営はまず死なないことが重要ですし、続ける限りは夢を語り続けられます。この会社のビジョンや構想は壮大で、唯一無二なものです。世代を超え、一つの文化を創る事業と言ってもいいと思います。時間もかかりますが、共にステージを上げていきましょう!ありがとうございました。
さて、これにて代表『田部和生』インタビュー企画は終了となります。
全3回に渡り、最後までご覧いただきありがとうございました。
過去のインタビュー記事はこちらからご覧いただけます。
第1回:代表『田部和生』インタビュー 第1弾!「ESJとの出会い」
第2回:代表『田部和生』インタビュー 第2弾!「静脈業界の変化」
次回はいつもの解説コラムの予定ですので、次の投稿も是非ご覧いただけますと嬉しいです!